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心身の発達に障がいがあり、特別な支援を必要とする児童・生徒の受け入れ一覧  

 
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    最終更新日 2017年11月           

インタビュー集

長年、カナダ・バンクーバーで邦人の為の精神医療に携わっていらっしゃる野田 文隆先生にお話を伺いました。
 
 
野田文隆先生プロフィール
カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学で卒後研修を受けた後、東京武蔵野病院精神科勤務。1999年4月より大正大学人間学部教授。ブリティッシュ・コロンビア大学精神科Adjunct Professor 兼任。
多文化間精神医学会理事長。
 
 
バンクーバーで永年日本人の精神医療をなさっていますが、その経緯について教えてください。
1985年に精神科のレジデント(研修医)としてバンクーバーに行きました。当時カナダにも、シアトルからサンフランシスコ間の地域にも日本語を話す精神科医は殆どなく、日本語による精神医療の過疎地でした。研修医という立場でしたが、カナダ全土やアメリカ北部からも相談を持ち込まれるようになり、これは必要なサービスであると実感するようになりました。
 
日系社会の中に主にシニア向けサービスを行う「隣組」というコミュニティがあり、そこでほかの留学生医師と共にカウンセリングサービスを始めました。当初は生活上の悩みの相談が多かったのですが、投薬や治療が必要なケースも出てきたため医師の資格が不可欠となり、バンクーバー記念病院の多文化外来の中に日本人外来が設立されました。
日本人外来は、同じ言語と文化的バックグラウンドを持った医師にメンタルな相談をしたいという日本からの移住者、留学生、研究者、赴任者が対象です。基本的には日本語で診療を行いますが、国際結婚のカップルの場合、夫婦の不和の原因が文化的葛藤であることも多いので、外国人配偶者には英語でカウンセリングをします。日系二世の場合には、母語は英語だがアイデンティティは日本人というような文化的背景があったりするので、英語でカウンセリングすることもあります。
 
 
経済面やその他の面でのサポートはあるのでしょうか?
海外にいる日本人の医療を誰が経済的にサポートするのかというテーマがあります。カナダ政府に対して日本の移住者に特別なサービスをして欲しいと言っても、既に多文化の人達には色々なサービスを提供しているので、どうしてその枠内のケアではいけないのかということになり、日本人に対してだけ提供する必然性が見出せません。私にしても、カナダでは医師としてのフルライセンスもなく、限定的な枠の中で仕事をしているので、カナダ側が雇う理由もありません。
しかし、海外で暮らす日本人を保護するというのは重要な問題です。海外で日本の旗を背負って働いている人達が病んでいることに対して、援助する、保護するというのはなくてはならないことです。

1986年当時は日本政府には海外で心を病んでいる人をケアするという発想はありませんでした。そういう人は海外へ行ってはいけないというところもあり、その後10年位は何の動きも見られませんでしたが、パリの太田先生、鈴木満先生と共に、ほとんどボランティアに近い形で、こういう活動が「邦人保護」であるという観点から外務省と粘り強く話し合いを続けました。1998年を境に情勢が大きく変わり、外務省改革の中で領事業務が見直された結果、外務省邦人保護課の業務の中にメンタルヘルス・ケアが積極的に含まれるようになりました。世界各地で精神医療に取り組んでいる人達に顧問医などという特別なポジションを与えて、積極的なサポートも行われるようになりました。精神的な問題を持つ人達にどう対応するかというレクチャーやマニュアルが作成され、災害やテロのような緊急事態が起こった時の危機管理のメンタルヘルスについての対策も私達、多文化間精神医学会と共に行うようになりました。
(現在は三ヶ月毎にバンクーバーに診療に行っていますが、常時available というわけにはいきません。以前から診療していた人が待っていたり、セカンドオピニオンを求めに来る人がいるので続けてはいますが、他にも色々なリソースが増えてきているので、そろそろ引退の潮時かなとは思っています)

海外の医師として働く場合、単に患者を診ればよいということではなく、その地のオリエンテーションもしなければいけないし、地域でのネットワークも把握していなければなりません。私は20年もいるので、どこの何を押さえればよいか分かっていますが、若い人には急には難しいでしょう。
 
 
20年の間には相談に来る日本人の層は変わっているのでしょうか?
変わっています。86年頃には戦前から戦後にかけて移住した、移住者と言われる人達が主でしたが、総じて年代が若くなり、日本人人口の動態が変わってきました。最近は圧倒的に多いのはワーキングホリデーや留学などで来る若い人達からの相談です。たとえば、留学生と外国の人との結婚に関わるトラブル、安易な恋愛や結婚などのトラブルがあります。
 
 
相談者の変化に連れて、相談内容も変わってきているのですね?
定住型の人達の抱える悩みは、あえて文化の種を探せばあるかも知れませんが、どちらかと言えば余り文化が絡む問題ではなく、日本のごく日常に見る問題に極めて近い。バンクーバーという土地柄かも知れませんが、がっちりと根付いた移住者が多く、また、余り差別もなく環境も劣悪ではないので、他の土地に比べれば居心地も良いということもあると思います。たまには明確なビジョンを持たずに来て、うまくいかないということもありますが。
 
最近では帰国を前提とした人達からの相談が主となりました。恋愛に絡む相談も多く見られます。ワーキングホリデーなどで若い層の出入りが多くなりましたが、カナダの文化に急激にまみれてしまったために、一種のidentity crisis に陥り、急性の適応障害や薬物中毒になるといった問題が起きています。
 
 
子どもについての相談は多いのでしょうか?
子どもに関する相談にはハードなものが多いです。日本で問題があった子どもを留学させることがありますが、母国でうまく行かない子どもが海外でうまくいくということは少ないのです。日本で不登校や引きこもりをしていた子どもを「向こうに行けば何とかなるだろう」と転地療養させるような気持ちで留学させた結果、ホームステイ先や学校でトラブルを起こすなど、色々な問題が起きています。
留学は、どの程度現実的な見通しがあるかが鍵となります。しっかりしたプログラムがあるとか、明確なものがあれば良いのですが、右の物を左に移すような考えや、「言葉の景色が変われば内面の景色も変わるだろう」という漠然とした楽観的な考えではうまくいきません。
問題が起きた場合、帰国するにしても親の納得が得られず、また留まるにしても難しいことがありますが、言葉の問題が乗り越えられれば、カナダの方がリソースはたくさんあると思います。ただ、カウンセリングのあり方に日本とは差があります。引きこもっている人をsocializeすると言ったりしますが、それができないから引きこもっているわけですね。
 
 
海外で適応できにくい性格や環境はあるのでしょうか?
校則などの縛りが嫌いで日本の社会になじめなかった人が外国で生き生きするということもありますが、大原則として、日本でうまくいっていない人は適応が難しい。人と接触するのが苦手な人、対人間の緊張が高い人が海外に行けば楽になるということも余りありません。
 
 
ストレスは国内外どこにでもありますが、海外では些細なことがより強いストレスとなって現れるということはないでしょうか
 それは裏と表ですね。海外で強く感じる場合と、逆に日本で気にしていることでも、海外では気にならないということもあります。

外国語が分からないと適応に障害があると良く言われますが、それはself esteem(自己評価)が関わってくるからです。「これくらいのことも表現できないのか」と、自分が小さく見えてくるのです。

一方、海外では他人に余り構われないという気楽さもあります。日本は気遣いの文化ですが、カナダやアメリカでは適度に構ってくれますが、黙っていると「話したくないのだな」と理解してくれます。
 
 
日本人の精神科医やカウンセラーがいない地域では、メンタルな問題が起きた時、どうすればよいのでしょうか?電話やインターネットでの相談についてどう思われますか?
海外は、特に精神医療に関しては、一つの医療過疎地と考えるべきです。遠隔地医療ということではtele-medicine という方法も考えられますが、電話相談やインターネット相談で治療の効果を上げるのは難しいのではないでしょうか。特に精神科医療というのは単に薬を飲めばいいというのではなくて、そこに肌の温もりのようなものがあって、微妙なやりとりをしながら行っていくものだからです。病状の段階も考えないといけませんが、緊急の手段として「最低限こういうことを教えて欲しい」という場合には役に立つこともありますが、長いスパンでの治療には向かないと思います。
 
 
そのような地域で総領事館が何らかの役割を果たすことは出来ないのでしょうか?
総領事館のケアというのはあくまでも緊急時の一時保護的な対応が主であって、医療ではありません。たとえば自傷行為があった場合に保護するといったようなことです。
世界的なネットワークも大切ですが、地域ごとに自立して自分達のリソースを持つしかないと思います。留学中の医師など草の根的な人材を探してネットワークを繋いでいくことが必要です。教会の牧師さんなどもそうですが、人材はかなりいますので、日本人のコミュニティが中心となって動いてくれれば、ネットワーク作りもスムースに行くのではないでしょうか。

医療過疎地では、「使えるものは何でも使う」という発想が大切です。公式に医師の派遣を求めても、財政的な問題もあって直ちに実現するというわけにはいきません。世界中にサービスを張り巡らすというのは絵に描いた餅で、現実的ではありません。
 
要は、まず、1緊急時の対応を考え、2地域のリソースを利用し、3それでも駄目なら帰国などの第三の方法も考える、と少しずつステップを踏んでいくことです。
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