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心身の発達に障がいがあり、特別な支援を必要とする児童・生徒の受け入れ一覧  

 
上記のリストはGroup Withが独自に調査・作成したもので、毎年更新しています。
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発達障害児と家族を支える会inフランス(A.S.A.T.F.J.)
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    最終更新日 2017年11月           

インタビュー集

ニューヨーク国際交流ディレクターとして3年間活躍された文部科学省の栗原祐司氏にお話を伺いました。
2001年9月から3年半にわたりニューヨークで国際交流ディレクター(注)として活躍された栗原氏に、ニューヨーク教育相談室の現状と北米地区補習校における相談機能についてお話を伺いました。栗原氏は赴任直後に同時多発テロに遭遇し、在任中は邦人子弟のためのメンタルケアサポート体制構築に尽力されてきました。最近の現場ではどのような問題がクローズアップされているのでしょうか。
(注)国際交流ディレクターは、文部科学省が平成2年度より在外教育施設に派遣している国際交流活動等を積極的に推進するための中核的な役割を果たす専任の職員。派遣期間は原則として3年。現在世界各地の日本人学校等に10名が派遣されている。
 
日時:4月26日
場所:東京ウィメンズプラザ
取材:Group With


栗原祐司氏プロフィール

1989年文部省入省。2001年9月?2005年3月まで国際交流ディレクターとしてNY日本人学校等に赴任。2005年4月より文部科学省大臣官房政策課企画官。
著書「テロ事件と子どもの心」―日本人学校・補習校におけるPTSD調査とケア―
ニューヨーク教育相談室/編(2004年9月 慶應義塾大学出版会)


1. ニューヨーク日本人学校等について

ニューヨーク地域には、「ニューヨーク日本人教育審議会」が運営する2校の全日制学校(ニューヨーク日本人学校、ニュージャージー日本人学校)と土曜日だけ授業を行う補習授業校2校(ニューヨーク補習授業校、ニュージャージー補習授業校)の合わせて4校の日本人学校と、数校の私立日系教育施設があります。

ニューヨーク在住の邦人子弟で全日制日本人学校に通っている子どもは1割未満で、9割以上は現地校で学んでいます。その9割の中のおよそ6?7割が補習授業校に通っていますが、現地校のみという子どもも多いというのが特徴です。アジアや中南米では、現地滞在の日本人子弟のほとんどが全日制日本人学校に通っていますので、北米はほとんどの子どもが現地校に通うという点で他の地域とはかなり状況が異なります。(だからこそ、世界中の補習授業校のおよそ半分が北米に偏在しています。)
平成4年度に初代国際交流ディレクターがニューヨークに赴任した当時は、バブル経済の余韻で日本人駐在員も多く、また、ニューヨーク日本人学校がコネチカット州グリニッチに移転してきたばかりで現地との軋轢も多く、日本人や日本文化に対する地元の理解を得るための対策が急務でした。また、英語のできない子どもたちの現地校での不適応や、現地の制度が分からない保護者への対応も必要とされていたことから、ニューヨーク日本人教育審議会に日本人専門家が常駐する教育相談室が設置されました。

現在は、現地コミュニティとの相互理解も進み、日本人の数そのものが減ったこともあって現地対策の必要性は減少していますが、一方で相談室の相談件数はほぼ横ばいで推移しています。また、最近ニューヨーク日本人教育審議会が保護者や現地に十分な説明責任を果たさないままにニューヨーク日本人学校の売却・移転を打ち出したことから、新たな問題が持ち上がっています。
 

2. ニューヨーク教育相談室について (資料提供:ニューヨーク教育相談室)

1.相談回数および相談形式
(1)相談回数(2004年3月から2005年2月) 3688件                 
 
表1 相談形式別内訳(対象 相談方法 回数)


 
(2)相談形式別内訳                 
本人や家族への面接相談が最も多いが、電話による相談も同様に多いことがわかる。(表1参照) これは、面接相談以外に電話のみの相談活動を行っているとともに、面接以外の時間に子どもの状態や細やかな様子などを密にその家族と連絡をとりあっているためである。 
また、本人や家族への直接的な援助はもちろんだが、その子どもの通う学校の先生や精神科医などの専門家と電話もしくは実際に訪問し、連携をとることも多い。

2.相談者の性別
直接的な相談の発起人は子どもの保護者もしくは学校の担任など子どもと関わりのある周囲の大人がほとんどである。
子どもの性別の内訳は図1の通りである。
男子の数が女子の数の約5倍である。
「集団」とは学校全体や教育委員会などからの相談を指している。
 

3.相談者の年齢
図2をみると、小学校高学年が最も多く(32%)、
  次いで就学前の子どもが多い(25%)。
  中学校にあがる前までの子どもが75%以上
  占めていることがわかる。


  

 4.相談内容
  相談者(子ども)の相談内容は大きくは 「問題行動・社会性」「発達障害」「精神科・情緒障害」 「情報提供」に関するものの4つに わけられる。図3はその内訳である。



  いくつかの問題を同時に持っている子どもが多いが、一番大きな問題となっていると思わることを基に分類してある。
  各分類の相談内容の詳細、相談回数は表2-表5参照。一番多い相談内容は自閉症・PDD、続いて不登校である。
発達障害の子ども達には定期的な継続した援助が必要なため相談回数が多くなっている。

表2.内容内訳 1 <問題行動・社会性>


表3.内容別内訳 2 <発達障害>



表4.内容別内訳 3 <精神科・情緒障害>


表5.内容別内訳 4  <情報提供>


 


1.相談回数および相談形式について
・ NYの日本人子弟の数は減ってきているにもかかわらず、相談件数は横ばい傾向であり、発達障害の相談などはむしろ増えてきている。(相談件数は述べ件数)


・ 資料の中の文書とは、現地の教育委員会へ提出する文書(英文)や帰国時に日本の教育委員会、学校に提出する現地での治療、教育の様子を日本語に訳した文書などを含んでいる。

・ 現地校のスクールサイコロジスト等からの連絡も多いが、これは相談室設置以来10年の年月がたち、周辺の現地校の間に相談室の存在と重要性が認識されてきていることの表れと思われる。

アメリカの現地校は、子どもに不登校が見られると直ぐに保護者に連絡が入り、そのままにしておけばネグレクトや虐待として保護者が訴えられる。こうした現地校の制度を知らない日本人の保護者が多いため、相談室が仲介役として入る場合も多い。

・ 相談を受けた場合の対応は障害のレベルやケースによって、次のような対応をとっている。
1 相談室で継続的なカウンセリングを行う。
2 現地校のスクールサイコロジストや現地の専門家等と連携して対応する。
3 他の専門機関や精神科医等を紹介する。
4 日本人学校への転校を進める。(ニューヨーク日本人学校には特殊学級がある)

・ 現在相談員は常勤1名、非常勤2名。来年度以降は、基本的に常勤1名、非常勤1名で運営していく予定。

・ 帰国する場合には日本にも連絡のつくカウンセラーや精神科医等の専門家・専門機関があるので、最寄りの機関を紹介したりする。
上記4.相談内容について
・ (図3参照)相談室発足当初は不適応に関する相談が多かったが、近年は発達障害に係る相談が多くなってきており、大部分は軽度発達障害。適切な支援を行うことによって通常学級で大丈夫というレベルの子どもが多い。
(世界中に日本人学校は84校あるが、その中でいわゆる特殊学級を持つものは7校のみ。文部科学省からは特殊教育の免許を持った教員もしくは養護学校等経験者を派遣している。補習授業校で特殊学級を設置しているところはないが、事実上受け入れている補習授業校もある。ただし、十分な認識がないままに入学を許可し、問題となっている例も見られるため、派遣教員の特別支援教育に関する研修の強化が求められている。)

・ アメリカはスペシャルエドケーションが進んでおり、歴史も古く制度も整っているため、北米に赴任する駐在員は日本で障害と診断された子どもを帯同してくる傾向がみられる。(ただし、日本人学校の特殊学級では、施設面や人材面から重度な障害には対応できないため、保護者の語学力に問題がある場合は、安易な帯同は避けるべきではないか。)
そのほか国内で不登校だった子どもを帯同して現地校でも不適応を起こすケースも多い。

・ 日本人駐在員の数が十数年前に比べて減少しているため、現地校でESLが廃止になったり、日本語のできる教員が減ったり、あるいは互いに相談できる日本人がいなくなることによって、逆に現地校でのトラブルの相談が増えてきているのではないか。


3.北米の補習授業校における教育相談機能

北米には世界中の補習授業校の約半数が存在しています。しかし、テロ事件以前に相談機能を備えていた補習授業校はNY、デトロイト、ロスアンゼルスの3校のみでした。(サンディエゴには形はあったもののその後自然消滅)

たとえ常設でなくても補習授業校も現地の日本人専門家のネットワークを確保し相談機能を持つことが必要不可欠であると思われ、文部科学省にも進言し、校長会等を通じて各補習授業校にもその重要性を訴えました。その結果、サンフランシスコ、バトルクリーク(現在は相談員が帰国して休止状態)、アトランタ、フィラデルフィアなどで相談室が立ち上がりました。全日校のあるシカゴにも働きかけましたが、うまく機能していないのが残念です。
 
補習授業校における相談機能は大きく分けて二つの面があると考えられます。
ひとつは教育ガイダンス的な意味を持つものです。デトロイトのようにほとんどが日系企業からの短期駐在員が滞在する地では、帰国後に向けて子どもの教育をどのように対応させたらよいのか、あるいは帰国後の進学に関する相談を受けることが多く、このような問題は派遣教員がある程度は対応できるかと思われます。

二つ目はサイコロジカルな意味を持つもので、NY、ロサンゼルス、サンフランシスコなど子どもの家庭の半数近くが永住・長期滞在者である地域では、日本語の遅れや発達障害に関する相談が多く、これらは専門家でないと対応できない問題を多く含んでいます。
数年前までは国内からスクール・カウンセラーを海外に派遣したらどうかという意見もありましたが、10年にわたるNY相談室の経験やテロ事件後の心のケアの実績を踏まえた場合、むしろ現地の人材や機関を活用し、現地リソースを使って対応していくことが望ましいように思います。現地の制度に通じ、(現地校などと)英語で対応もできる専門家が必要とされているので、日本から数年単位で派遣される制度では研修程度の意味しか持たず、真に現地で有用な機能を果たすのは難しいのではないでしょうか。
 
また、相談室の運営や相談員の確保には、当然のことながら人件費はじめ諸経費がかかります。まずは補習授業校の派遣教員の理解もさることながら、補習授業校の運営母体である地元日系企業や日本人会、商工会等の理解が大変重要だと思います。昨年度はNY、サンフランシスコ、ロサンゼルス、アトランタの4校が文部科学省から海外子女教育相談協力校の指定を受けており、補助金を受けて教育相談を実施していますが、どこも財政難にあえいでいるというのが実態です。
しかし、日本国内ではほぼすべての中学校にスクール・カウンセラーが配置されている一方で、異文化に囲まれてストレスの多い子どもたちがいる在外教育施設はまったく顧みられていないという現実があります。厳しい財政状況の下で、国として新たに在外教育施設におけるカウンセリング制度を新設することは極めて困難だと思いますが、一人でも多くの関係者の理解を得て、世界中の一校でも多くの日本人学校、補習授業校において教育相談機能、カウンセリング機能が付与されることが望ましいと考えています。

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