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2016年度版
心身の発達に障がいがあり、特別な支援を必要とする児童・生徒の受け入れ一覧  
*只今、2017年度の状況について各日本人学校に調査アンケートをお送りしています。ご協力お願いいたします。

 
上記のリストはGroup Withが独自に調査・作成したもので、毎年更新しています。
ご協力頂いた各関係機関の皆様方に心より感謝申し上げます。

お知らせ


発達障害児と家族を支える会inフランス(A.S.A.T.F.J.)
「でこぽんクラブ」

財団法人 海外邦人医療基金(JOMF)
  (会員向けサービスです)



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    最終更新日 2017年9月           

インタビュー集

マニラ日本人会診療所に勤務されていた宮本悦子医師にお話を伺いました。
平成18年4月から三年間、フィリピンのマニラ日本人会診療所において(財)海外邦人医療基金(JOMF)の派遣医師(注)として邦人医療に尽力された宮本悦子先生に現地の邦人医療の実情、メンタル相談例などについてお話を伺いました。
(注)JOMFの医師派遣制度について
JOMFは民間各社の出資金(寄付金)及び会員企業の年会費に基づいて運営され、海外の日本人会組織の要望により現地に在留邦人向けの診療所あるいは医療相談室を開設するため援助及び運営のサポートを実施し、医師の派遣などを行っている。現在開設している診療所は4カ国(シンガポール、マニラ、ジャカルタ、大連)。その他の地域へは巡回健康相談として回っている。  


日時 2008年4月18日
場所 東京ウィメンズプラザ
取材 Group With

宮本悦子氏プロフィール
心療内科専門医。内科研修後、東大大学院にて研究を進める傍ら、大学病院にて内科、心療内科等の外来、企業に於ける産業医、老人施設に於ける訪問診療等幅広く活躍。平成18年4月から20年3月までマニラ日本人会診療所に勤務後、同年4月から外務省医務官として中米に赴任


「マニラ日本人会診療所での三年間」


マニラ日本人会診療所
≪概要≫
医療行為が認められているシンガポールや一部の先進国を除き、ベトナム、ジャカルタ、マニラなどアジア諸国のほとんどは日本の医師免許での医療行為は認められていません。多くは医療通訳や医療相談員という立場で派遣されています。簡単な問診や診療、医療相談はおこないますが、薬の処方などをする場合は、現地の医師による確認や署名が必要になります。マニラ日本人会診療所にはフィリピン人の内科常勤医に加え産婦人科医、小児科医、超音波医、レントゲン医、臨床検査医が非常勤で勤務しています。

患者さんの約9割近くは日本企業関連の方々(主に短期滞在の日本企業関連者とその家族)、残りが永住者や旅行者です。

一般的に医療費や薬代の自己負担額は日本と比較すると、少なくとも数倍以上はかかるうえに、入院の場合はさらに高額負担となります。企業の場合は診療費の一部を企業が負担したり、健康保険組合の利用ができたりするため、トラブルになることはほとんどありません。海外旅行障害保険のキャッシュレスサービスの利用や日本の国民健康保険への請求も可能です。

しかしながら長期滞在者や旅行者の中には日本国内で国民保険や海外旅行障害保険に加入していない為に高額の費用を払うことができず、その結果病院で適切な治療を受けられないケースもあります。時に病院で治療を受けられずに亡くなっていく邦人高齢者のケースもあり、その背景は複雑です。
 
≪マニラでの疾患≫
マニラ日本人会診療所で受診する方々の症状は概ね日本で一般外来をしている時と類似しています。診察数は月に約500名(健康診断数を含む)で風邪症状や下痢などの胃腸障害での受診で半数以上を占めています。その他は皮膚科(昆虫・ダニや海洋植物による発疹、帯状疱疹、アレルギー湿疹)、耳鼻科(大気汚染や化学物質などの影響か喉や耳の頑固な炎症、長引くアレルギー症状・咳の持続)、整形外科(けがや骨折のほか頸椎・腰椎症が原因の疼痛やしびれ)、生活習慣病、泌尿器科、産婦人科などの順に多くなっています。

純粋にメンタルの問題だけで訪れる患者さんは数%ですが他の症状で来院されてもメンタルな問題を同時にかかえている場合も少なくありません。

外来患者のおよそ20%が15歳未満です。小児の場合は私の他、週に2回フィリピン人小児科医が診ています。その小児科医の日本語レベルは少し通じる程度ですが、とても多くの家族から信頼をおかれ、身振り手振りや英語で母親達ととてもよくコミュニケーションがとれています。必要であれば日本人事務長が通訳したり私が同席したりしています。

フィリピン人の産婦人科医も週2回勤務しています。妊婦検診、子宮がん検診、更年期障害の受診もあり、出産は月あたり2名から3名です(近くの総合病院での出産)。産婦人科の先生は日本で研修を受けていましたので重要な言葉は日本語でも通じます。その他フィリピン人の内科医も常勤しており一緒に邦人診療にあたっています。
  
フィリピン特有の疾患としては世界で有数の大気汚染が原因と思われる、長引く扁桃腺炎や中耳炎が多く、喉の腫れや結膜炎でも来院してきます。マニラに来てから喘息を発症するケースが成人・小児ともにみられました。ダニ、昆虫などの皮膚科関連もあります。
 
 感染症では熱帯病のアメーバー赤痢が年間80?100名、デング熱が年間20名程、腸チフスが年間5名から10名でこれらは通常雨季にあたる8月から10月頃に増加します。

マニラは高層ビルが集中する大都会ですが、水質が良好とはいえず、特に雨季などは腸チフスやデング熱などの感染症が増加します。腸チフスの予防接種はありますが、一回の接種で確実な効果を得ることはあまり期待できません。その他急性ウィルス性肝炎(A型・B型)は年間3名から5名、性感染症は年間30名から50名、活動性肺結核が年間数例ありました。
 
≪フィリピンでの他の日本語の通じる医院≫
フィリピンの医科大学を卒業した日本人医師や日系人医師が数名います。日本語が通じますので日本人も受診しています。WHO(世界保健機関)やJICA(国際協力機構)などの邦人医師専門家や研究職の医師はおりますが、実際に邦人を診療する臨床医はごく僅かです。
現在マニラの二ヶ所の総合病院に日本人専用の受付があります。一つは診療所からほど近い、マカティメディカルセンターで日本人のコーディネーターが2008年から常勤しており外来や入院、専門医の紹介をしていただくことが可能になりました。もう一つケソン地区にあるセントルークスメディカルセンター(聖路加系の病院)に日本人コーディネーターが数年前から活躍しています。この病院の分院が日本人の多く住むマカティ地区に数年後開院される予定です。
 
≪メンタル相談について≫
日本語の話せる医師がまだ少ないマニラではメンタルな問題をかかえた場合に、日本語で受診する環境は残念ながらまだ整っていません。メンタル専門の臨床心理士さんや看護師さんも残念ながら現時点ではいません。

過去二年間でメンタル不全での受診者数は106名(男性56名、女性50名)でした。企業派遣者が多いことから年齢的には40代が一番多く30代がそれに続きます。女性では20代、男性では50代の受診も多くみられました。受診者の中で10代は1割程度です。
私は心療内科が専門でしたので、昼休みなどの診療時間外に、時間を要するカウンセリング予約を受け付けていました。それ以外に内科の症状で受診した患者さんの中でうつ症状がみられたというケースもありました。

DVの相談も3年間に数件ありましたが、狭い社会なので、日本人診療所では治療を受けず別の現地病院を受診するケースもあるかもしれません。

こちらで診察してみて予想外だったことはマニラでのメンタルな悩みは異文化が明らかに関連しているケースは案外少なく、むしろ日本で受ける相談内容と同様のものが多かった点です。例えばストレス要因では家族の問題と仕事上の問題がトップを占めています。家族の問題では夫婦間のトラブルや受験のストレスが多く、仕事上の問題では現地採用の人とのトラブルではなく、日本人同士の人間関係でのトラブルが多かったです。

日本人会診療所の患者さんの9割が企業の社員と家族、という環境も上記のような結果になったのかもしれません。その一方で、1割弱の高齢者を中心とする永住者や、自営業の方々は明らかに生活環境や背景が異なり、ストレス要因も異なってきます。

精神疾患既往歴のある患者さんの受診もあります。薬の継続で、ほとんどは大きな問題なく経過していました。これらの薬の処方は一部安定剤や抗うつ剤で入手できないものもありますが、大抵の種類はフィリピンでも入手可能です。
 
≪日本人学校との連携≫
講演会や学校の先生方との交流もありました。診療所にいつでも相談できるような体制はつくっていました。ただのんびりとした国柄や、学校の良い教育方針の為か在校生500名ほどの中で不登校の問題は殆ど見られなかったようです。

企業からの派遣数は少しずつ増加傾向ですが、帯同家族の数は減少傾向にあり、企業関係の日本人生徒数は減少傾向にありました。それとは反対に、永住者や自由業の子どもたちやフィリピン人との国際結婚で生まれた子どもたちの割合は少しずつ増えてきているようです。
 

≪子どもの発達相談≫
JOMF(海外邦人医療基金)では年に一度、巡回検診があり、日本から小児発達障害専門の先生がいらっしゃいます。事前に受診希望者を募り、昨年は十数名の参加がありました。うち半数以上は問題がなく、残りの症例も重症例はみられなかったということです。


マニラでは日本のような乳幼児健診制度はなく、つい子供の検診の機会を逃してしまうお母様も多いようです。また現地小児科医に検診を依頼しても、言語の違いもあって、発達障害の診断が困難となるケースもあり、「本当に自分の子供は正常に発達・成長しているか」と不安をもつ親は多いようです。その点からも、このように、年に一度日本の専門医にみてもらえる巡回検診制度は大変貴重です。

過去3年間の診療ではADHDや広汎性発達障害、摂食障害やリストカットなどメンタル障害をかかえる子供の受診もありました。精密検査のために日本に家族全員で帰国したり、日本への一時帰国にあわせて毎年専門医を受診したりすることもあります。
長期間の通院や療養が必要と判断される場合、それをどこで行うかという判断は大変重要です。今後も5年以上フィリピンでの長期滞在が予想される家族や、日本人医師がいない地方に住んでいる邦人などの場合は 数少ない現地の小児発達専門医を紹介することになります。日本人の少ない地域や長期滞在が増えている地域は現地の医師の協力が必要となります。

興味深いことに、言語は異なっても、患児や親との相性が合う医師であれば、それほど詳細な医学用語のやりとりがなくとも外来通院がうまくいくことが多いということです。ただ、欧米で臨床経験を積んだ優秀な医師の多くはそのまま欧米に留まることが多いため、マニラではごく少数の専門医に患者が集中します。そのため、初診の予約に半年以上かかるなどの問題がおきています。
 
≪子どもの健康について≫
診察を受けにくる子どもの主な原因は風邪、発熱、下痢など大人のケースと類似しています。

子どもに対して気をつけなければならないことはやはり大人同様 1.疲れをためない 2.調理のさいにはよく火を通す 3.まめな水分補給 4.石鹸を使った手荒い 5.蚊に刺されないように注意する 6.ストレスをためないなど、途上国の一般的な注意事項が本当に重要なことだと三年間の診療を通じて改めて思います。特に無理のないスケジュールをたてることが一番大切ではないかと思います。一時帰国前後、赴任直後の三ヶ月間などは病気になりやすい時期でもあり、あえてゆっくりと過ごすようこころがけてほしいと思います。
 
≪予防接種・医師の紹介状について≫
子供を連れていく場合、予防接種記録や医者の紹介状などはとても重要です。
予防接種に関しては、日本の接種スケジュールは欧米のスケジュールとは多くの点で異なります。アメリカンスクールなどでは入学時に予防接種記録の提出を求められることがありますので注意が必要です。アジア諸国の多くは欧米の接種スケジュールに沿っておこなっています。それに加えて渡航先の国々で流行している疾病など(髄膜炎菌や肺炎球菌など)の予防接種をすすめられることもあります。

赴任後は、現地の小児科医に母子手帳(もしくは英文予防接種証明書)を見せたうえで、その国のスケジュールに合わせて追加接種してもらうことが必要です。
予防接種記録の英文証明書は日本の病院でも書いてもらえますが、母子手帳にも英語が併記されているので、そのままでも利用できます。

ワクチンの品質管理など安全性については、マニラなどの主要都市の総合病院や日本人会診療所など、日本人がよく利用している施設では問題ないと思います。使用ワクチンは欧米の大手製薬会社のもので、世界でも広く普及しています。
慢性的な病気をかかえている方は、日本の主治医に英文紹介状を書いてもらうことをおすすめします。紹介状があるのとないのとでは大きな違いがあります。心臓の病気を抱えていたり、慢性疾患を抱えていたりするお子さんが私のところにも来ましたが、紹介状があればマニラでも優秀な専門医への紹介がスムーズにいきますし、引き続き現地で病気をフォローすることも可能になります。また薬や治療方針に関し質問がある場合は、現地と日本の医師同士が連絡をとりあうこともあります。

紹介状がない場合、病気の診断をするために現地の医師から、再度詳しく検査することを要求されたり、病気が悪化して初めて病院を受診する場合に、病気の情報がないと、誤診につながったりすることもあり得ます。日本人医師がいない地域では直接現地の医者に診てもらうことになりますので、英文の紹介状を持って渡航することはとても重要だと思います。

 
≪乳幼児健診・育児サークル≫
フィリピンでは 国で定められた乳幼児の定期健診制度はありません。従って、つい子供の検診の機会を逃してしまう親も多いようです。特に決められた時期はありませんが、現地でも小児科医に依頼すればいつでも健康診断をしてもらえます。

当診療所では現地の日本人の育児サークル(スタッフは看護師・保健師・薬剤師などの医療関係の経験を持つ駐在夫人らで構成)が定期的に妊婦教室や母親学級を開き活発に活動しています。まだ大きな組織ではありませんが、育児をするお母様方にとって心強い存在になっています。


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